畳表|畳表の種類

私たちが作るのは「畳床」。「畳床」と「畳表」が合わさることにより『 畳 』に仕上がります。ですので、ここで簡単ですが畳表のご紹介をしたいと思います。一口に畳表と言っても多くの種類があります。 イ草の畳表であれば国産、外国産の違いがあり、更に織り方による種類の違いもあります。 またイ草以外の素材、例えば最近ではいろんな色が楽しめる和紙や樹脂の畳表もあります。

ここでは、「国産イ草の畳表」「七島藺の畳表」「目積表」「龍髭畳表」「和紙や樹脂の畳表」を紹介します。

国産イ草の畳表

ここでは自然素材であるイ草の畳表のご紹介です。現在畳表の殆どは中国産イ草を使っているもので、国産イ草の畳表は貴重な畳表です。一枚一枚丁寧に仕上げられた「国産イ草の畳表」を是非、「ひのきの畳床」と組み合わせてみて下さい。

イ草の品質
上質の畳表
畳表の生産者情報タグ

一枚の畳表には、イ草が4000本から7000本も使われていて、イ草の茎に変色や傷などがなく、一本一本の太さや色が揃っているものが高品質なイ草です。そして、そのようなイ草の根元と先端を除いた中央の部分を多く使用した畳表は、上質と言えます。一般的には丈の長いイ草を使い、使うイ草の本数が多いほど、美しく弾力性のある素晴らしい畳表になります。 また、製品トレーサビリティを目的としたタグのついた畳表もあり、丁寧に織り上げられた畳表のイ草生産情報などが確認できます。

国産イ草の畳表ができるまで

イ草は田んぼで栽培される農業産物。主要産地である熊本県を筆頭に、備後表で有名な広島県の他、岡山県、石川県、福岡県、佐賀県、ビーグと呼ばれるイ草の産地の沖縄県などがあります。熊本県の産地では8月に苗床に植えつけられて、12月上旬に本田への植え付けを行い、翌年6月下旬から7月初旬に収穫を行います。その後泥染め等工程を経て、畳表に仕上がります。

苗堀り 

8月に苗床で育てられた苗を株分けして、本田に植えつけます。

植え付け

植え付けは11月下旬から12月下旬まで作業が行われます。

先刈り

5月下旬ごろイ草の先端を切り払い、新芽の発芽を良くします。

収穫

6月下旬から7月中旬にかけ、成長したイ草の刈取りをします。

泥染め

色や香り、光沢を出すために、天然染土を使って泥染めします。

製織

イ草を長さごとに選別し一枚一枚時間をかけて畳表に織ります。

仕上げ

織上げた畳表の傷などを一枚毎丹念にチェックして仕上げます。

出荷

製品に対する責任表示を明確にするため生産者番号を付けます。

小松イ草の畳表

産地:石川県小松市

石川県小松市でイ草を作っている宮本さんにお話を伺いました。小松はイ草の栽培ができる日本最北限。 そのような北国地域で栽培される小松イ草は雪の下で冬を過ごします。 苗を育てる段階から収穫まで2年間かかるのですが、小松イ草の苗は雪の下で春を待ち、イ草の表皮が固くなって芯が充実する真夏に刈り取り作業を行います。 小松イ草の特徴は、イ草の青い新鮮な匂いの成分が多いことと、耐光性に優れていることがあげられます。

小松イ草を作る宮本さんは、小松市でイ草・畳表を作る唯一の生産者。 品質の良さを最も大切にして作業をされています。 たとえば、背丈が110cm以下の短いイ草は畳表には使いません。 畳の幅は90cmなので十分な長さにイ草を育て、太くてしっかりしたイ草を使います。

イ草の品種の研究や畳表の製造加工の工夫などをして、良い畳表を生産されています。

小松イ草②
小松イ草⑦
小松イ草
小松イ草⑧
小松イ草⑤

備後表 中継六配畳表

産地:広島県福山市(備後)

広島県福山市の備後畳表の産地を見学に行った際、イ草栽培から備後畳表に織り上げるまでのプロセスを大学のゼミ活動として活躍されている教授にお会いする機会に恵まれました。備後畳表は高級畳表の代表で、歴史的には織田信長築城の安土城では「畳は備後表に高麗縁」として備後畳表が重用されており、今に続いています。現在備後地域でイ草を栽培して備後畳表を生産している方はとても少ないのですが、このような活動を通じて安土桃山時代から続く備後畳表の事を大学で体験できるのはとても素晴らしいと思います。

写真は備後中継六配畳表という伝統的な畳表です。中継畳表というのは、しっかりと充実したイ草を畳表の両端から中向きに織上げて真ん中で継ぎ合わせたもの。そうすることにより、イ草の良い部分だけが畳表として使われます。写真にある髭(ひげ)のようなものはイ草の先部分で畳表の裏側から出ています。この髭部分をむしり取ってから畳床に取り付ける作業に入ります。経糸にしっかりとした麻糸が使われているので、イ草をたくさん織り上げることができ非常に重厚感のある畳表です。

畳のサイズは大きく、五八(江戸間)と本間(京間)に分かれ、畳表もそれらに合わせたものがあります。本間は五八よりも大きく幅もあるのですが、六配というのは本間(京間)の畳表よりも更に幅広で、中継ぎ技術を用いることで畳の目で六目分広いのです。一般住宅等では使われることはめったにありませんが、お茶室やお寺などでは使われることもあるようです。(下写真手前より中継六配畳表、本間、五八)

今回はこの中継六配畳表の幅を存分に使った半畳のヘリなし畳の製作です。 

備後中継ぎ表1
備後中継ぎ表2
備後中継ぎ表3

琉球畳 / 七島藺(しちとうい)の畳表

半畳の畳に縁をつけない、いわゆる琉球畳は根強い人気です。 琉球畳には、七島表という特別な畳表が使われているのをご存知でしょうか。 一般的な畳表には、イグサ科のいぐさが使われるのですが、七島表というのは、植物的にも別の種類のカヤツリグサ科の七島藺(しちとうい)という植物から作られた畳表です。 今は大分県国東半島で栽培されていますが、昔は琉球で主に生産されていて、この畳表を縁なしでつけた畳が琉球畳と呼ばれる所以です。 イ草は断面が丸いのに比べ、カヤツリグサの断面は三角なのが特徴。 その三角の形を裂いて、畳表に織り上げるのです。

そんな七島藺の畳表をひのきの畳床と組み合わせて、八ヶ岳や富士山が見渡せる場所に敷かせて頂きました。

七島藺の畳表の魅力は、ごつごつした感じ、と言いますか、野性的と言いますか、素というか。 色や繊維の太さが均質でないのです。 畳表面のごつごつ感は、経糸に太い麻糸を使っているから。 太い麻糸と不揃いな七島藺で織られていることで、独特の風合いが生まれます。 そこがいいと思います。 イ草の凛とした風合いもとても素敵ですが、七島藺のごつごつした風合いが何とも言えず良いです。

目積表 ~縁(へり)なし畳~

上記の七島藺の畳表はかなり特別な畳表ですが、現在縁のついていない畳の主流は目積表(めせきおもて)を使った畳。 目積表というのは、イ草を使う点は一般的な畳と同じですが、織り方が異なります。 目積表は畳目を細かく織り上げた畳表。下の写真は、通常の国産畳表と目積表を比較しています。 それぞれ目の小さい方が目積表。

この目積表を半畳サイズの縁なし畳に使い、隣り合う畳を交互に(互い違いに)並べるととってもモダンな雰囲気になります。このような並べ方は「市松敷き」と呼ばれます。 畳の向きにより光の反射が異なり、美しい景色を作り出します。 時間が経過し、畳表がきれいな黄金色になったときは、それもきれいな表情ですよ。 畳ってきれいですよね。

龍髭表(りゅうびんおもて)

龍(りゅう)の髭(ひげ)と書いて、龍髭(りゅうびん)。 そんな名前の畳表をご存知でしょうか。 主に床の間で使われる伝統的な畳表で、大きな特徴はその色。 通常の畳表はイ草の色(薄緑)をしていますが、龍髭表は天日干しを繰り返すことで色が変化します。 龍の髭の如く、渋~い黄金色になったイ草を織り込んで作ります。 もう一つの大きな特徴は、通常の畳表の畳の目(織幅)が通常の畳表が1.4cm程度なのに比べ幅広で、3.6cm(大目)や2.2cm(小目)となっています。 

写真は広島県尾道市で龍髭表をつくっていらっしゃる山根商店様を訪問した時に撮影させて頂きました。 イ草を天日干ししている様子です。 太陽の下、整然と並んできれいな風景。 雨の日には屋根に戻し、晴れた日に天日干しをし、何回か繰り返した後に畳表に織り上げます。

龍髭表
龍髭表2
龍髭表4
龍髭表3
龍髭表5

和モダンな畳表

イ草を使った畳表以外にも、和紙をコヨリ形状にしたものを織り上げた和紙畳表や樹脂繊維をイ草の代わりに使った畳表があります。 色が様々選択できるという利点や、イ草のように時間がたつと色が変化するという事がないという点が挙げられます。 畳というと和室が思い付きますが、いろんな色を使えるので、純和室でなくともキッズルーム(子供部屋)や寝室を畳敷きにしたり、食事場所を小上がり風に畳にしたり、リビングルームの一角にゴロっとできる畳の間を作ったり、畳ベッドにしたりといった場所にいかがでしょう。 色彩豊かな畳表やデザイン性のある畳縁を使って、カジュアルな場所、和モダン・モダンテイストなデザイン性のある空間に畳が敷かれる場面も増えています。

モダンな色彩の畳表