ひのきの畳床の良さ|畳床こだわり製法

「ひのきの畳床」は、世界中この日本にしか(一部は台湾にも)生息しないひのきという天然素材を縫い上げた畳床です。 重要な建物にひのきを用い、水気の多い部屋にはひのき板を使い、ひのき風呂を最上とし、大事なものはひのき細工の家具に守って来ました。けれども昔はひのきを畳床の材料にする手段も技術もありませんでした。 

私たちアンサンブル会がたどり着いた「ひのきの畳床」はこうした古来よりの知恵を、どうにか畳床という生活具に実現したに過ぎません。そしてひのきの性質をすべて取り入れた畳床はかつて存在しない新しい畳床の誕生だと考えています。

ひのきについて

フィトンチッドと呼ばれるひのきに含まれる香気成分には、人の気持ちを安らかにさせるリラックス効果・森林浴効果があります。森林に入るとふと感じる清涼感、心地よい香り。森林浴で心も体もリフレッシュした経験があると思います。

木の中でもひのきにはこの効果が高く、リフレッシュ効果以外にも、抗菌・防虫(ダニやゴキブリ)、消臭効果があります。また、ひのきの香りは健康に有害なホルムアルデヒド(VOC)を取り除く働きももっています。ひのきは一般住宅の柱などの建築材のみならず、お寿司屋さんのカウンターやまな板、ひのき風呂といった浴槽などにも使われています。

ひのきは昔々の時代から日本の木文化・木造建築の中心にありました。「日本書紀」の中には「スギと楠は船に、ひのきは宮殿に、」と記されており、古(いにしえ)の時代からひのきが宮殿建築用に使われていました。ひのきの色調は薄紅白色、材肌は緻密で肌触り良くつやがあり、特有の香りがあります。建築材として強度・耐久性に優れ、法隆寺に代表されるように千三百年も塔を支えることができるほど。また、千三百年たった後でもカンナで削れば良い香りがするとは、法隆寺の修繕作業にあたった宮大工のお言葉。

樹としては高さ40Mにもなる常緑高木の針葉樹で、天然では東北南部から屋久島まで分布しており、長野県の木曽のひのきは日本三大美林の一つに数えられています。植林樹種としても各地に産地があります。

ひのき①

こだわり製法

3つの素材で作ります。 

「ひのき」と「麻布」と「畳糸」の3つの素材だけを使ったとてもシンプルな畳床。 「ひのきのウール」を麻で挟み、畳糸(経糸と横糸)で縫い上げています。接着剤などは全く使いません。 柔らか過ぎず、硬過ぎず。 そんな「ひのきの畳床」で是非足触りをお楽しみください。

木毛
麻
畳糸

こだわり製法―②

●適度なクッション性
経糸(たていと)一本一本が畳床全体を上面から下面までを縫い上げています。 畳床全体の上面から下面まで貫いて縫い上げる事により、足裏から伝わる体重を畳床の厚み全体で支えることができ、同時に畳床全体のクッション性で体重を分散することができます。 足裏にかかる体重が分散されると疲れにくく、足腰への負担が軽減され、足にも体にも優しい畳となるのです。

~畳床全体を縫い上げています。~

畳床全体を縫っています
畳床ポコポコ

そのようにして縫われた畳床には、縦に33本(江戸間)の経糸が通り、横方向には90本以上の横糸が通ります。 

畳床の表面は、実はまっ平らではなく、経糸と横糸が交差する部分がくぼみ、表面が「ぽこぽこ」しているのがお分かりになると思います。「ぽこぽこ」の高さは1mm程度なのですが、この「ぽこぽこ」感が足触りの良さとなります。

他素材の畳床との違い

ワラ畳床や建材畳床(化学畳床)との違いのご説明です。
呼吸し続けるひのき畳床

呼吸し続けるひのきの畳床

2年間雨ざらしに放置した後に切断した「ひのきの畳床」の断面写真です。 工場は長野県にありますので、冬には雪が積もり、多くの虫たちがいます。そのような環境下において、畳床の表面には汚れが付きますが、内部は新品の畳床と変わりない状態でした。現在も実験は継続中です。ひのきが毎日水分を吸って吐いて吸って吐いて、呼吸をし続けています。

比較として、同様の環境にワラ畳床を置いてみましたが、ワラ畳床は降雨の後に水分が抜けずカビが発生しました。また、建材畳床(化学畳床)では水を吸いませんでした。 勿論、畳は屋外で使用するものではありませんので、実際の使用環境とは異なります。ただ、ひのきの畳床に関しては、2年もの長期の悪環境での実験をすることにより、ひのきの強さを実物で確認することができました。

 

ひのきだからこその強さ

ひのきは人が斧を入れなければ樹齢千年の命を保ちます。その命を支える幹もまたそれだけの強靭な組織を持っています。「ひのきのウール」もまたその強さを引き継ぎ、「ひのきのウール」を素材とするひのきの畳床も、ひのきの強さを持っているのです。

一方、わらはもともと稲の幹です。季節が来ると実を落とし、落ちた実は来年の初夏になると発芽し、そうして世代をつないで行きます。親(稲藁)は実を落とした後、寒さと雨に打たれ倒伏します。(つまり大切な子孫である種子の上にかぶさります)もし親(稲藁)が丈夫だったら、子(モミ)はかぶさった親の体のせいで太陽を浴びられず芽を出せなくなってしまいます。ですから稲藁はモミを落とした後は、水分を得て出来るだけ早く自らを腐朽させ姿をなくし元の大地に分解されて行く必要があるのです。

この植物としてのもともとの性質の違いが、畳床という同じ製品にした場合に違いとして表れているのです。

これは畳の機能としてどのように表れるか

①畳床の強靭性=弾力性
200キロの荷重を10cm角に10万回繰返し載貨したワラ畳床との比較実験では、ワラ畳床が次第にヘタれてくるのに比べ、ひのき畳床は弾力性をある程度維持しました。また、湿気に対する強さもあるため、湿気等による畳床の弾力性劣化も少ないのです。

②畳床の調湿能力
「2年間雨ざらし」で実証されますように、千年の樹齢を支える組織の強靭さは水に浸かっても乾燥が加われば元通りの畳床に戻ります。私たちの実験によれば24時間水に浸した時、20kgのひのきの畳床は50kgに重さを増し、乾燥室でもとの20kgに戻りました。一つの言い方をすれば1畳分の畳床が30Lの水を吸収し、6畳分とすれば180Lつまり浴槽一つ分ほどの水を吸ってしまうということです。この吸水能力は畳床の調湿能力の基本ですからひのきの畳床が居住者の健康に大きく寄与できるのです。

③畳床の防ダニ・防カビ性能
ひのきには独特の香りがあります。これはテルペンと呼ばれる揮発油成分によるもので、防虫・防菌作用があります。この成分に加え、前述の調湿機能により湿気を溜め込まず水分吸収・放出を繰り返しますので、湿気を好むダニやカビに対し効果があるのです。

法隆寺は西暦607年(推古15年)創建と伝えられ、使われている材木種はひのきです。1300年以上前に建てられたものが現存しています。これは一つには檜の堅牢さと木材組織の強靭さの証明であります。長寿の理由はそればかりではなく、虫に食い荒らされないこととカビない(腐らない)という要因も大きく関係していると言えます。

他の畳床と比較して

建材畳床(化学畳床)と比較してのひのき畳床の優位性
① 素材を縫い上げる事による適度なクッション性
② 水分を吸って吐き出すという調湿機能
③ 自然素材で環境循環型の製品

ワラ畳床と比較してのひのき畳床の優位性
① カビ・ダニ等が発生しにくい抗菌・防ダニ効果
② ヘタリ等による劣化が少ない耐久性
③ 水分を吸って吐き出すという調湿機能
④ 重量30キロ以上のワラ床に比べ軽い作業効率性